とりくみ紹介
全国の学校や自治体、団体や企業によるプログラミング教育のとりくみを紹介します。

千葉県立袖ヶ浦高等学校

千葉

使用言語・教材
Scratch、Processing、VBA、Java Script、LEGO Mindstormなど
使用機材
iPad、PC、Mac、Raspberry Pi
教科
通年(3年次、3単位)「課題研究」

概要

情報コミュニケーション科は普通科高校であった袖ヶ浦高校に、2011年に新設された情報専門学科です。この学科の生徒は全員、入学時に購入した自分のiPadを日々の授業や部活動、学校行事、家庭学習等に活用します。

公立高校による生徒の私物端末活用(BYOD: Bring Your Own Device)は全国初の試みで、ICTを特別なものとせず、日常的に当然のものとして活用し、変化し続ける社会に対応する生徒の育成を目指しています。

学科スタート時よりカリキュラムにプログラミングを設置し、平成27年からは、より早い学年での履修が必要と考え、3年次から2年次へ教育課程を変更しました。また、情報コミュニケーション科で得たプログラミング教育の成果は、すべての生徒に必要なものであると捉え、平成28年度入学生より、普通科の生徒もプログラミングが学べるカリキュラムに編成しなおしています。

とりくみのねらい

情報コミュニケーション科の授業方針として、既存の体系的な知識を暗記するだけでは変化の加速する今後の社会の変化には対応できず、自らあるいはチームで課題を発見し、主体的・協働的かつ創造的に問題を解決していこうとする姿勢が望まれると考えています。現在アクティブ・ラーニングという言葉が話題になっていますが、学科開設当初より、その基本方針は変わっていません。

iPadの活用が注目されがちであるが、それはねらいを実現する一つのツールに過ぎず、プログラミングもまた、生徒の創造的かつ課題解決に向けた重要なツールです。2年次に「アルゴリズムとプログラム」を必修科目としていますが、本来のねらいは3年次の課題研究につながります。

プログラミングは課題解決への一つの表現方法であり、その「課題」は教員が用意したものではなく、彼ら自身の設定した「課題」による当事者意識があってこそ学べるものと考えているからです。各自(各グループ)の課題はそれぞれ異なり、またそれぞれの解決の方法と障壁、試行錯誤の内容もまたそれぞれのものであることが重要と考えています。また、第四次産業革命と言われる時代を迎え、プログラミング、センサー、ロボットなどを自分たちの生活の中にあるものと捉え、実際の課題解決に結びつけていく意識、デジタル的なものづくりを体験することがこれからの生徒に必要だと考えています。

実践例

通年(3年次、3単位)「課題研究」
共通テーマ:ICTで社会の課題を解決する

授業の流れ

①解決すべき社会的課題のピックアップ
②テーマの決定
③解決する方法の決定
④研究の実践
⑤評価
⑥発表会
⑦論文の執筆

プロジェクト例

袖ヶ浦高校課題研究発表会レポートからも詳細をご覧いただけます。

高齢者と家族とつなぐ電子メールインタフェース

社会の高齢化が進み、独居老人の孤独死などが社会問題となっている。離れた家族とのコミュニケーションにICTを使うことが考えられるが、スマートフォンの普及により、操作を難しいと感じる高齢者が増えています。

タッチパネルは本来コンピュータの操作を簡単にするものでありながら、高機能化が進むにつれ、かえって初心者や高齢者にとって使いにくいものになっているのではないか。
そこで、あらかじめ登録してある家族のメールアドレスに向けて、用途を絞り、たった1つのボタンでメールが送れるような高齢者に向けた電子メールインタフェースを考案しました。

HTML及びJavascriptで作成したWebページをタブレット端末で表示させ、画面に配置された4つの用途を表したボタンを押すだけで、あらかじめ決めてある本文の内容、メールアドレスに送信されます。老人ホームの職員に意見を求めたところ、4つの内容だけではどうしても利用場面が限られすぎるので、もう少し自由度が欲しいとの意見をいただきました。そこで、Scratchを利用し、各文節に区切られたキーワードを選択することである程度自由度を持った文章が作成できるインタフェースも新たに開発しました。

学校でのプロジェクションマッピングのアイデア

プロジェクションマッピングはエンターテインメント的な使い方がほとんどですが、自分たちの学校生活の中でも活用できるのではないか。生徒への連絡手段は朝と夕方のホームルームに限られています。そこで、校舎内で誰もが利用し、かつ誰もが自然に目にする場所に情報を提示することで、新たな連絡手段になるのではないかと考えました。

階段の前面にプロジェクタで情報を提示するようプログラムし、伝える情報の内容は、特定のアカウントでログインしたTwitterによるつぶやきを、リアルタイムで取得して表示します。Processingのプログラム内でTwitterのAPIを利用してツイートを取得し、階段に合わせてスクロールする文字の位置、大きさ、速さなどをプログラムで調整しました。

ICTで募金活動の主旨を伝える

募金をしない人の主な理由は、「何に使われるかよくわからないから」。では、主旨をきちんと伝えることで募金を増やすことができそうですが、多くの場合、主旨を説明しようとしてもなかなか立ち止まってもらえません。

そこで、まず10円玉を使ったピタゴラスイッチ的な装置で通行人の注目を集め、そのコインが募金箱に達したところでセンサーが作動し、募金の主旨をわかりやすいアニメーションで見ている人に伝えました。募金の主旨に賛同してくれた人には、先ほどの10円玉を募金に使わせてもらうこととし、募金行動と主旨説明の順序を逆にするという発想で解決を図李ました。

レールの上をコインが走るコースを作成。最終的にコインは募金箱に到達するが、その入り口にセンサー「なのぼ〜ど」が設置してあります。照度の変化がRaspberry Piに送られることで、Scratchで作成した募金の使途を説明するアニメーションが再生されます。

Kinectによるダイエットゲーム

ダイエットはなかなか長続きできません。楽しんで続けられる仕組みが必要です。しかし、器具を使うものなども面倒なので、何も持たずに楽しんで出来るダイエットゲームを作成しました。Microsoft社のX-Box用周辺装置、「Kinect」をPC用ドライバで動かし、人間の動きを認識させます。各関節の位置情報をScratchに送り、画面内の人間の形をしたグラフィックが人の動きと同じように動きます。画面内に動く標的を実際に体を使って触って得点を競うことで、コントローラなどを利用せず、素手で運動ができる仕組みとなっています。

対話することができる施設案内ロボット

来校者を施設に案内するのにロボットを使うことが考えられるが、無機質で突き放しているという印象を与えてしまう問題点があります。そこで、本当の人間と会話しながらであれば、ロボットが案内をしても温かみが感じられるのではないかと考えました。

レゴ社Mindstorm EV3で校舎内の教室を案内するコースを走るプログラムを作成し、ロボットに校舎案内をさせます。その際、EV3にiPadを搭載し、離れた位置からFacetimeを使って通話することで、ロボットとともに進む人と会話しながら案内をすることができるようになります。

校内の友達を探す画像検索データベース

現代の高校生の間ではアニメやゲームなどのコンテンツが増え、嗜好は細分化されています。アニメが好きだからといって、話が合うわけではなく、種類が多すぎるため話の合う人を探すのは難しい。学校の外の人とSNSで繋がろうとする人が多いが、危険もあります。そこで、まずは校内に目を向け、身近なところにも同じ趣味を持つ友達になれる人がいるのではないかと考えました。趣味の写真をメール添付で送るだけで、写真がデータベースに登録され、キーワードや画像を検索することで、近い趣味の人を見つけられるようなデータベースを作りました。

まず、電子メールに件名と写真を添付してもらい、学校内の生徒にメールを送ってもらいます。
そのアドレスに届いたメールは、件名とともに、Outlook VBAで作成したプログラムによって指定されたフォルダに自動的に保存されます。ファイル名は件名を使って自動生成され、同一ファイル名となる場合には連番を付加するプログラムとなっています。

情報流出の恐ろしさを体感できるゲーム

ツイッターによる不用意な発言で炎上する若者が後を絶ちません。情報モラルについての学習は行っていても、どうしても他人事になってしまい、自分のこととして捉えにくいことが原因ではないか。情報が拡散することを体感的に経験することで、不用意なネット上の発言を防ぐ意識を高めるためのゲームを作成しました。

Processingでゲームを作成し、画面中央にスマートフォンを模したグラフィックを配置し、そこから様々なツイートが同心円状に放出されていくような仕組みを作りました。スマホからツイートが移動し始めてから、ある一定の線をすぎると、インターネット上に公開されたことになる、という設定になっています。

問題のあるツイートは、線を越える前にタッチすることで取り消すことができるが、間に合わないとそのツイートは拡散し、増殖していきます。一度ネット上に出てしまうと、自分では消去やコントロールができなくなる、ということを実感できるゲームである。タッチパネル式電子黒板に表示することで、画面タッチで操作できます。