これからを生きる子どもたちにはどのような力が必要とされるのでしょうか。 それは、世界中の多様な価値観の人と協働し新しい価値をつくりだしていく力、コンピュータには代替できない「つくるちから」と「コミュニケーション力」だと考えています。
CANVASは2002年の設立当時から、デジタル時代の創造力やコミュニケーション力を育むカリキュラムの1つとして、プログラミング教育にも取り組んできました。しかし、当時はまだパソコン・ケータイとインターネットが普及するデジタル化の初期段階でした。その後のスマートフォンやタブレット、ソーシャルサービスの普及によって、すべての人にとってデジタル機器が身近な存在となりました。
そして、いよいよ「IoT」が現実になります。それは、コンピュータを意識しなくても、身の回りのもの全てがコンピュータ化するということです。それにともない、プログラミング教育の必然性が認められるようになりました。IoTやAIは、全てのモノが命を持つという、人類が初めて直面する事態であり、産業にとどまらず、それ以上に、社会、暮らし、文化に変革をもたらしうるものです。だからこそ全ての人にとって重要な教育問題として議論されるようになりました。
海外では、すでに初等教育段階で必修にしている国もあります。例えば、イギリス、ロシア、ハンガリー。米国もオバマ大統領が重要性を訴え、向こう3年間でプログラミング教育に40億ドル(約4400億円)を拠出することを発表しました。プログラミングの公教育での必修化は世界的な流れになっています。
コンピュータが他の領域と違うのは、コンピュータが、あらゆるモノ、分野、環境に溶け込み、定着し、それらを制御するものとなっていることです。仕事にも勉強にも買い物にもコンピュータやインターネットが入ってきています。ご飯を炊くときも、洗濯をするときも、テレビを見るときも。車はコンピュータと化し、掃除にはロボットが活躍しています。家電、冷暖房、台所、風呂、すべてをコンピュータが管理し、電車・信号機の管理、病院の診療システム、税金や銀行預金の管理は、全てインターネットで行われています。
つまり生活・文化・社会・経済のあらゆる場面で、私たちの生活をコンピュータが支えており、そしてそれらのしくみは全てプログラミングによって生まれているのです。
その基礎メカニズムを習得することは、車など他の道具とは重要性が格段に異なります。国語・算数と同様、どのような人にも必要な基礎能力なのです。コンピュータに関する原理的な理解があるかないかによって、社会のありとあらゆる場面における対処能力が、大きく変わってくるはずです。
私たちが大切にしているのは、プログラミング「を」学ぶのではなく、プログラミング「で」学ぶ、ということ。 国語の授業があるからといって作家になるわけではありません。音楽の授業があるからといって作曲家になるわけではありません。同じようにプログラミングの授業があるからといってプログラマーになるわけではありません。プログラミングを通じて論理的に考え問題を解決する力、他者と協働し、新しい価値を創造する力を育んで欲しいと考えています。
これまでプログラミング教育を推進してきましたが、全国の子どもたちに届けるには、課題も山積みです。カリキュラム・教材不足、指導者不足、環境未整備、支援体制不足。整備が課題を感じ、カリキュラムの開発、授業支援/ワークショップ実施、指導者研修の実施、機材整備サポート、地域の支援体制づくり等を行ってきました。本サイトでは、これまで全国のパートナーの皆様と蓄積をしてきたカリキュラムやノウハウを共有することで、プログラミング教育の広がりの一助になればと願っています。
これからの時代を生きていく子どもたちには、「今までにない仕事」を自らつくり出していくことも求められているのです。
プログラミング教育が全国に広がることは、すべての人が情報社会をみんなで安心して生きていける基礎的な素養を身につけることにつながると考えます。
そして、そこで培われた創造力やコミュニケーション力は社会経済の活性化をもたらし、さらには、それが将来の新しいIT産業を産んだりする国際競争力の強化にもつながると信じています。
プログラミング教育に注目が集まっています。
それには、いくつかの背景があります。新学習指導要領に基づいて2012年から中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修となりました。
また、2013年6月に閣議決定された成長戦略では「義務教育段階からのプログラミング教育等のIT教育を推進する」とも記載されています。同時に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」にも「初等・中等教育段階からプログラミング等のIT教育を、高等教育段階では産業界と教育現場との連携の強化を推進し、継続性を持ってIT人材を育成していく環境の整備と提供に取り組む」と記載されました。
イギリス、ロシア、ハンガリーなどでは、既に初等教育段階でプログラミングを必修にしています。アメリカもオバマ大統領がその重要性を訴え、向こう3年間でプログラミング教育に40億ドル(約4400億円)を拠出することを発表しました。プログラミングの公教育での必修化は世界的な流れになっています。
公教育以外でも、アイルランドではCoderDojoという子どもにプログラミングを教えるムーブメントが立ち上がり、世界中に普及しています。アメリカではCode.orgという団体がプログラミングの必修化を訴えるキャンペーンも展開しています。
そのような動きの中、文部科学省は「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」を立ち上げ、2020年より小学校にプログラミング教育を導入する方針を示しました。
議論のとりまとめとして発表された「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」という報告書には、「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。」という方針が示さています。
CANVASは2002年から、デジタル時代の創造的な学びの場を産官学連携で推進する団体としてNPO法人として2002年に立ち上がりました。
これからを生きる子どもたちに必要な力は「異なる背景や多様な力を持つ子どもたちがコミュニケーションを通じて協働し、新たな価値を生み出す力」だと考え、子どもたちの創造的な学びの場を産官学連携で、提供してまいりました。
設立時からプログラミング教育にも取り組んできました。2012年の夏からは、東日本大震災の被災地でも要望を受け、プログラミングワークショップを開催しました。地域の団体の方々と連携をしながら約半年の間に600名以上の子どもたちが参加しました。
その後、改めて、すべての子どもたちにプログラミング教育の機会を提供したいという想いから、プログラミング推進プロジェクトPEG(programming education gathering)をGoogleの後援のもと立ち上げました。2013年10月に、Googleの会長であるエリック・シュミット氏が来日しプロジェクトの立ち上げを発表、5000個の小型コンピュータ「ラズベリーパイ」を活用し、1年間で25000人の子どもたちにプログラミング教育の機会を提供することを目標として掲げました。
ある小学校では、全校児童約350名にラズベリーパイを贈呈し、国語・算数・理科等の教科授業においてプログラミング教育が導入されました。ある中学校では技術・家庭科の「プログラムによる計測・制御」の一環で実施されたり、ある学校では中学生が先生となりプログラミングの授業を行うなどの発展的な事例も生まれました。
またワークショップや授業の開催だけではなく、指導者研修等を通じたワークショップ・授業の開催支援を行ってきました。1年間で1000人以上の先生方に研修を提供してきました。ウェブサイトを通じて、全国から寄せられたアイデアや授業例を共有し、プログラミング教育に関する情報を集約しつつ、全国に発信する活動も行っています。
このように全国で実践を重ねた結果、全国120以上の小中学校、大学、教育関連団体、7地域の自治体・教育委員会との連携により、目標を達成するとともに、活動を拡大しています。
PEGが最も大事にしてきたことは「gathering」です。学校も、ミュージアムも、NPOも、家庭も、地域も、企業も、自治体も、みんなで集まり、力をあわせ、プログラミング教育の輪を広げていく運動をつくっていきたい。愛知gathering、横須賀gathering、北九州gathering、郡山gatheringなど15地域でgatheringがスタートしました。この活動は、指導者研修会や出張ワークショップ・授業をきっかけに、各地でのプログラミング教育を盛り上げていこうという運動です。
プログラミング教育を全国に届けるに当たっては、カリキュラム及び実践不足、指導者不足、環境未整備、地域の支援体制不足、ノウハウの共有不足など課題は山積みですが、プログラミング教育に強い想いを抱く全国の仲間と連携し、知見やノウハウを蓄積し、1つ1つ課題を克服して、さらなる広がりを推進していきたいと考えます。
このプラットフォームメディアが、プログラミング教育に関わる多くの皆様のお役に立てることを願っています。